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岸辺みどりの手の表現


あまり見かけない表現があった。メモ的に書く。
舟を編む』9話のAパート終わり間際、鼻歌交じりに会社を出て、夕陽に手をかざす岸辺みどりの指がわずかに透けていた。鼻歌が童謡「手のひらを太陽に」だったことに掛けた表現で、とくに手のひらではなく、指の中節(第一関節と第二関節の間)が透けているのがそれらしく、みどりの中に生まれた情熱(血潮)を透かして見るという比喩にもつながって、演出上、じつに機能的な表現になっていた。
絵コンテを担当した平松禎史つぶやきによると、「普段使わない言葉が抜けて落ちてしまうことを予告したくて提案した」との事。絵コンテのみの参加であっても、さすがの存在感。ヒッチコックリスペクトだというみどりが食事に誘われる後半のパート(佐々木さんが通り掛かるサスペンス)も日常のハラハラがあり、おもしろかった。


このエピソードは岸辺みどりの指先も目を引いたところだ。みどりの指先、爪にはマニキュアが塗ってあり、今回はグラデーションのある処理。みどりの指が映るたび、必然的にその塗り分けをしなくてはならず、だからといって意識的に指の見えないようカットを割ったり、芝居に制限を付けている様子もなかった。ファッションに気を使う岸辺みどりのキャラクターを指先から表現してやろうという一手間だと思うが、凝ったことをやるなあと感心してしまった。辞書と同じく、多様性なのだろう。みどりのようなファッションに詳しい女性が関わって、初めて届く言葉もある。多様な言葉に対応するためには、それだけ多くの指先と情熱が必要だ。ここではその一端が描かれているのではないか。グラデーション処理のマニキュアから、そんなことを考えてしまった。


演出は3話に続いて、佐々木美和。マニキュアの処理以外にも髪をかき上げる女性的な仕草(左手で右の髪をあげるのは巧い!)や自然な間の取り方に細やかな心配りが見えた。本格的に演出へ転向するのだとしたら、要注目のひとりかもしれない。今後の活躍が楽しみだ。


B01M62OTZU舟を編む オリジナルサウンドトラック
池頼広
アニプレックス 2016-12-21

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